米国へ食品を輸出する際、パッケージ裏面に必須となるのが 栄養成分表示(Nutrition Facts) です。日本の栄養成分表示とは必須項目・計算基準・書式が大きく異なり、日本語ラベルの英訳だけでは要件を満たしません。本記事では、いわゆる「FDAラベル認証」の中核である Nutrition Facts の作り方を、根拠規則(21 CFR 101.9)に沿って実務目線で解説します。
① Nutrition Facts は米国 FDA の食品表示規則(21 CFR 101.9)で様式・項目が定められている。
② 2016年の Final Rule により様式が改訂され、2020〜2021年に完全施行済み。
③ 必須ビタミン・ミネラルは Vitamin D / Calcium / Iron / Potassium の4項目。
1. Nutrition Facts とは何か
Nutrition Facts は、米国で販売されるほとんどの加工食品に表示が義務づけられている栄養成分パネルです。表示すべき項目・順序・文字サイズ・罫線に至るまで、FDA の規則で細かく規定されています。日本の「栄養成分表示」に相当しますが、別物として設計し直す必要があります。
2016年5月に公表された Final Rule により様式が大きく改訂され、カロリーの大型表示、「Added Sugars(添加糖類)」の新設、必須ビタミン・ミネラルの見直しなどが行われました。大手メーカーは2020年1月、それ以外は2021年1月までに新様式への移行が求められ、現在は新様式が標準です。
2. 表示が必須の項目
現行様式で表示が求められる主な項目は次のとおりです。
| 区分 | 主な必須項目 |
|---|---|
| エネルギー | Calories(大きく強調表示) |
| 脂質 | Total Fat / Saturated Fat / Trans Fat |
| コレステロール・ナトリウム | Cholesterol / Sodium |
| 炭水化物 | Total Carbohydrate / Dietary Fiber / Total Sugars / Added Sugars |
| たんぱく質 | Protein |
| ビタミン・ミネラル | Vitamin D / Calcium / Iron / Potassium |
旧様式で必須だった Vitamin A・Vitamin C は必須ではなくなり(任意表示は可)、代わりに Vitamin D と Potassium が必須になりました。実重量(mg / µg)と1日摂取基準に対する割合(%DV)を併記します。
3. サービングサイズ(1食分)の決め方
Nutrition Facts の数値は「1サービング(1食分)あたり」で表示します。このサービングサイズは事業者が自由に決められるものではなく、RACC(Reference Amounts Customarily Consumed=常識的に摂取される基準量)という食品カテゴリーごとの基準に基づいて決定します。
RACC は食品ごとに定められており、これを無視した過小なサービング設定は不適合の典型例です。1容器が1〜2食分に相当する小型パッケージでは、「1食分あたり」と「1容器あたり」を併記するデュアルカラム表示が求められる場合もあります。
4. 栄養成分値の求め方 ― 計算(理論値)とラボ実測
栄養成分の値を得る方法は大きく2つです。
(1)データベース計算(理論値)
原材料ごとの栄養データと配合比から理論値を算出する方法です。信頼できるデータベースに基づけば、実測なしでも要件を満たせます。コストを抑えられ、多くの加工食品で採用されます。
(2)ラボ実測
分析機関で実際に成分を測定する方法です。加工による損失が大きい場合や、特定成分の強調表示(例:「高たんぱく」)を行う場合など、精度が求められる場面で選択します。
5. 丸めルール(Rounding Rules)
FDA は各栄養素ごとに数値の丸め方を細かく定めています(21 CFR 101.9(c))。例えばカロリーは50kcal以下は5kcal単位、それ超は10kcal単位に丸める、ナトリウムやある値以下は「0」と表示できる、といった規定です。この丸めを誤ると、計算値が正しくても不適合になります。日本の表示に慣れた担当者がつまずきやすい箇所です。
6. 書式(フォーマット)の種類
- 標準(Standard / Vertical):最も一般的な縦型パネル。
- Tabular / Linear:表示スペースが小さいパッケージ向けの横型・行型。
- Simplified(簡易様式):多くの栄養素が「0」となる食品で使用できる簡略版。
- Dual Column:1容器が複数食分に相当する場合の併記様式。
パッケージの面積や食品特性に応じて、認められた様式の中から適切なものを選びます。
7. 日本の栄養成分表示との主な違い
| 観点 | 日本 | 米国(FDA) |
|---|---|---|
| 基準量 | 100g / 100mL 等が中心 | RACC に基づく1サービング |
| 必須項目 | 熱量・たんぱく質・脂質・炭水化物・食塩相当量 | 上記に加え Added Sugars・Vitamin D・Calcium・Iron・Potassium 等 |
| 様式 | 比較的自由度が高い | 罫線・文字サイズまで規定 |
| 丸め | ルールあり(基準が異なる) | 21 CFR 101.9(c) の丸めルール |
このように、「翻訳」ではなく「作り直し」が必要です。値の計算基準からフォーマットまで米国仕様で組み直さなければ、通関で表示不備を指摘されるリスクがあります。
Nutrition Facts を含む米国向け裏面ラベルを、
規制実務の専門家が一件ずつ確認して制作します。
よくある質問
Q. 日本の栄養成分表示をそのまま英訳すればFDAラベルになりますか?
なりません。必須項目・計算基準・サービングサイズ・書式・丸めルールが異なるため、英訳だけでは 21 CFR 101.9 を満たさないのが一般的です。
Q. 栄養成分の値はラボで実測しないといけませんか?
必ずしも実測は不要です。信頼できるデータベースに基づく計算値でも要件を満たせます。強調表示や精度が必要な場合にラボ実測を検討します。
出典・一次情報
- 米国連邦規則集 21 CFR 101.9(Nutrition labeling of food)― eCFR
- FDA「Changes to the Nutrition Facts Label」― fda.gov
- FDA「Food Labeling & Nutrition」― fda.gov
※ 本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の輸出案件における法的助言ではありません。規制は改正される場合があります。最新の適用要件は一次情報および専門家の確認のうえでご判断ください。関連:FDAラベル認証とは / 料金プラン。